出来杉くんでも嫉妬する!? のび太の圧倒的な引き寄せ力【出木杉くん考察2】

出木杉くんでも嫉妬する!? のび太の引き寄せ力 アイキャッチ

前回「劣等生の対極に位置する男、出木杉くんとは」に引き続き、『ドラえもん』に登場する出木杉くんにスポットを当てた記事です。

『ドラえもん』にはさまざまな願望や、その裏返しである嫉妬が描かれています。

劣等生であるのび太の対極として描かれている出来杉くんは、まさに完璧超人。今回の記事は、そんな二人の関係性と、出木杉くんがのび太に憧れる要素を考えてみる内容です。

この記事を書くサナトは、こんな人間です

サナト

・コンプレックスについてメインで扱うブログを運営してます
・ドラえもんが本当に大好き。実家にてんとう虫コミックスと文庫をほぼ全巻所蔵
・考察好き。コンプレックスを解消するヒントを本や映画からもらいました

当記事は原作の各場面を引用しながら、3回に渡って掘り下げていく企画の、第二回目です。ちなみにアニオリは横に置いておきます。

全3回の記事内容

第一回:

第二回:

当記事:出木杉くんがのび太に嫉妬しないとは思えない、引き寄せ力について

第三回

※これが正解だと言うつもりはさらさら有りません。「そういう見方もあるか」と楽しんで頂ければ幸いです。

こんなことを知りたい方にオススメ
  • 出木杉くんとのび太の関係性
  • のび太くんが出木杉くんをどう見ているか
  • 出木杉くんの叶えたい夢と、のび太の関係
  • 出木杉くんがのび太をどう見ているか
  • 子供時代から大人にかけての二人の変化

それでは第二回、どうぞ。

Contents (Click!)

出木杉くんとのび太の関係

のび太の対極に位置する人間

ご存知のとおり、出木杉くんは何をやらせても完璧な少年です。

勉強ができるだけではありません。実はスポーツも万能で、ジャイアンズに入れたら大活躍します。

チームメイトに「しまっていこうぜ。」と呼びかけるなど、キャプテンシーもうかがえてジャイアンもたじたじ。攻守の好プレーでチームを勝利に導きました。ジャイアンをして「お前のおかげで勝てた。ごくろう。」と言わしめるほどです。

引用:22巻「出来杉グッスリ作戦」スポーツも万能な出来杉くん

引用:22巻「出木杉グッスリ作戦」ジャイアンも褒めるしかない。運動神経と体力もある出来杉くん

引用:藤子・F・不二雄『ドラえもん』 小学館 てんとう虫コミックス第22巻「出来杉グッスリ作戦」

同級生に対して「ごくろう。」と言うジャイアンの精神性も凄いものがありますが、とにかく出木杉くんの運動能力はジャイアンの折り紙付きです。彼は机にかじりついているだけのガリ勉ではないのです。

更に、絵も上手。デザイナー志望のスネ夫が「じつにうまい!」と素直に認めます。(34巻「みたままベレーで天才画家」)また、工作や料理も非凡な腕を持っています。

勉強、スポーツ、芸術、趣味、料理のいずれも突出した能力の持ち主です。レーダーチャートMAX。万能の天才と呼ばれた、レオナルド・ダ・ヴィンチを彷彿させます。

サナト

のび太は作中で何度「負けた」とうなだれたか分かりません

上記の全てがニガテなのび太にとって、まさしく対極に位置する存在なのです。

のび太の恋のジェラシー対象

さらに、出木杉くんはのび太の恋敵でもあります。

しずかちゃんはたびたび出木杉くんと二人で遊んでおり、ある回では「ますます すきになったわ。」と公言。道具でしずかちゃんの心を奪おうとして失敗してしまった哀れなのび太。もはや鼻水をたらして泣くしかありません。

引用:37巻「たまごの中のしずちゃん」道具の洗脳が解けて素の状態で出来杉くんに惚れ込んだしずちゃん。のび太は策に溺れ完敗。

引用:藤子・F・不二雄『ドラえもん』 小学館 てんとう虫コミックス第37巻「たまごの中のしずちゃん」

もともと、ドラえもんが来たことによってのび太の運命は変わったはずでした。ジャイ子と結婚するという当初のルートが変わり、しずかちゃんと結婚することになったのです。

ところが、ドラえもんはまだ未来は確定していないと言います。

未来というのは、かわることもあるからね。うかうかしてると、出木杉にとられちゃうかも…。

引用:37巻「たまごのなかのしずちゃん」ドラえもんは未来が不確定だと言い出す。のび太は実力で競り勝つことを断念

引用:藤子・F・不二雄『ドラえもん』 小学館 てんとう虫コミックス第37巻「たまごの中のしずちゃん」

出木杉くんは、のび太にとって不確かな未来の象徴のようなものです。

”しずかちゃんと出木杉がこれ以上仲良くなったら、ドラえもんが来る前の未来に戻ってしまう”と、はっきり考えた場面はありません。が、しずかちゃんをお嫁さんに出来なくなるのでは、とのび太が恐れていることは確かです。

のび太は、「しずかちゃんとの結婚が自分の幸せな未来だ」という価値観を持っています。『ドラえもん』のかなり初期から、結婚するならしずかちゃんが良い、ジャイ子の夫になる未来は嫌だ、という態度を表明しています。

のび太のヒサンな未来像で幕を開けた『ドラえもん』。貧乏な上に、結婚相手はジャイ子。のび太にとって、ジャイ子との結婚はなんとしても避けたい未来だ。

このように開始当初の『ドラえもん』は「悲惨な未来を避けたい」という、いわばネガティブな願いの成就が目的だった。しかし、それはすぐに「幸福な未来を迎えたい」という、ポジティブな願いに変わる。のび太はそのために進歩していくのだ。のび太の求める「幸福な未来」、それはもちろんしずかとの結婚である。

引用:小学館ドラえもんルーム『ド・ラ・カルト 〜ドラえもん通の本〜』1997年 小学館「のび太としずか 愛の物語」
サナト

現代は連載開始時に比べて価値観が多様化しているので、誰かとの結婚が幸福だ、という考え方に対する是非はあると思います

ただ、これはあくまでのび太の幸福観です

話を戻すと、のび太にとっては、出木杉くんが「幸福な未来」を変えかねない人物に見えています。ただの恋の嫉妬じゃないんです。一度は確定したはずの幸福な未来が揺らぐから、のび太はとても焦るし、彼を敵視するんですね。

しかも、戦うにはあまりにも強すぎるライバルです。

そこでのび太は正々堂々ではなく、道具の力で出木杉くんをおとしめようと画策するのです。そして、毎回失敗してしまい、ますます劣等感にさいなまれます。

サナト

しかし、だからといってのび太は出木杉くんを心底憎んでいるわけではないのです

こんぷち

ここがのび太の良いところ!

のび太の二番目の相談相手が出木杉くん

恋のライバルではありますが、のび太は出木杉くんを認めています。のび太が知恵を借りる時に、ドラえもんの次に頼る存在です。特に、他人に言えない悩みや相談ごとをする際は、一人だけで訪ねていきます。出木杉くんは他人の相談を笑ったりしないし、人にも言いふらさないという信頼があるんですね。

引用:『大長編ドラえもん のび太の魔界大冒険』のび太は出来杉くんに一人で相談に行く。出木杉くんは真剣に取りあう

引用:藤子・F・不二雄『大長編ドラえもん 5 のび太の魔界大冒険』 小学館 てんとう虫コミックス

さらに、のび太は「君はいいやつだ」と漫画の中で2回は言っています。そのうち一度は、”自分ではしずかちゃんを幸せにできそうもない。自分は身を引くから、代わりに幸せにしてやってくれ”、という文脈で言っています。(32巻「しずちゃんさようなら」)つまり、のび太は自分以外でしずかちゃんと結婚する人を考えるなら、出木杉だと思っているということです。

知力があるとか、ハンサムであるとか、そういう基準ではない点が面白いですよね。

「いいやつ」だから、しずかちゃんの将来を託すんです

これはやはり、出木杉くんのパーソナリティをのび太が信頼している証だと思います。

じっさい、出木杉くんに毎晩いたずら電話を仕掛けていたクラスメイトの悪事が分かった時も、出木杉くんはこのように言っています。

しゃべるつもりはないよ。もうしないと約束してくれればね。

引用:巻「真夜中の電話魔」出来杉に嫉妬したクラスで2番の子、ガリベンくん

引用:藤子・F・不二雄『ドラえもん』 小学館 てんとう虫コミックス第30巻「真夜中の電話魔」

いいやつです。

出木杉くんは、のび太に嫉妬され、同時に信頼もされているのです。

出木杉くんはのび太のここに嫉妬する!?

さて、やっと本題です。そんな出木杉くんでも、のび太に嫉妬しているに違いないと思う要素があります。ちなみに、しずかちゃんのことではありません。

それは、のび太の引き寄せ力です。

恋路では嫉妬した様子のない出木杉くん

まずは、恋の嫉妬はしていない、という考察からしていきます。

大人になったしずかちゃんは、のび太と結婚することを選びます。結婚前夜に、男友達が集まったパーティーで、大人の出木杉くんはのび太にビールを注ぎます。

「ぼくらのアイドルだったしずちゃん……。」

「しあわせにしてあげてくれよな、のび太くん。」そう言う大人の出木杉くんは、表情がさっぱりしていて、とても爽やかです。

引用:25巻「のび太の結婚前夜」出来杉くんに祝杯を注がれるのび太。

引用:藤子・F・不二雄『ドラえもん』 小学館 てんとう虫コミックス第25巻「のび太の結婚前夜」

もともと、出木杉くんはしずかちゃんのことをそれほど好きでなかったのではないかと思われるかも知れません。

しかし、さきほど触れた「たまごの中のしずちゃん」という話では、このように話します。

ぼくだってしずちゃん大好きだよ。でもこんな機械にたよってきみの心をうごかすのはいやなんだ。

引用:37巻「たまごのなかのしずちゃん」出木杉くんは男を上げ、のび太は男をこれ以上ないほど下げました

引用:藤子・F・不二雄『ドラえもん』 小学館 てんとう虫コミックス第37巻「たまごの中のしずちゃん」

なので、彼はやはりしずかちゃんのことが好きだったのだとは思います。ただ、嫉妬に狂っている様子は無いのです。

出木杉くんは、外国人の奥さんと結婚してヒデヨという子どもをもうけます。そして火星に仕事で出張する際、ヒデヨをのび太・しずか夫妻の元へ預けているんですね。

出張中はヒデヨがすっかりおせわになりまして。

引用:「しずちゃんをとりもどせ」

引用:藤子・F・不二雄『ドラえもん』 小学館 てんとう虫コミックス第40巻「しずちゃんをとりもどせ」

執着があったらこんな行動はとても出来ないのではないでしょうか。

だから、こと恋に関しては、出木杉くんがのび太にジェラシーを抱いてはいないと思います。仮にあったとしても、すぐに吹っ切れたのではないかと。

のび太に憧れない方がおかしい SF体験を引き寄せる力

出木杉くんは、のび太のある素質に嫉妬していると思います。それを説明していきます。

のび太くんにはSF(すこしふしぎな)体験を引き寄せる力があります。(この、SF=すこしふしぎ というのは藤子・F・不二雄先生がご自身の作品を評した時に使った言葉です)

サナト

出木杉くんはその知的探究心からして、のび太のSF体験を引き寄せる力に羨望と嫉妬を抱くに違いない、と僕は考えます

完璧な少年、出木杉くん。そんな彼にも、いつか叶えたい願望があります。

それは、未来の世界を見ることと、月や火星に行くことです。

いけるなら、いきたいよ。月とか、火星とか。

引用:44巻「ハワイがやってくる」出木杉くんは大人になってその夢を叶える。

引用:藤子・F・不二雄『ドラえもん』 小学館 てんとう虫コミックス第44巻「ハワイがやってくる」

これが意味するところは、出木杉くんは伝え聞いた知識や研究だけでは満足できないタイプだということです。実地におもむき、体験することに重きを置いていることがうかがえます。

なぜなら、未来の世界の話を聴くだけなら、のび太でもドラえもんでも質問すれば良いわけです。出木杉くんはタイムマシンの存在を知っています。それでも、出木杉くんはこの目で見たいと願うのです。

宇宙に関心があるにしても、「宇宙物理学を極めるぞ」ではありません。志向としては「実際に行きたい、見たい」なんです。

ほんとにつれてってくれるの!?

引用:27巻「人間ブックカバー」未来の世界にいけると分かって大はしゃぎの出来杉くん

引用:藤子・F・不二雄『ドラえもん』 小学館 てんとう虫コミックス第27巻「人間ブックカバー」

のび太のお願いを聴く形で、交換条件としてタイムマシンに乗せてもらった出木杉くん。

このあと、未来の世界を見た彼は感情をあらわにして大喜びします。ここまで子供らしくはしゃぐ様子の出木杉くんは、非常に珍しいです。

こうして未来の世界を見る、という1つ目の体験願望は、のび太を介して叶えられます。

しかし、2つ目の願望は時間を掛けて自力で叶えることになりました。

子供の頃から「いけるなら、いきたいよ。月とか火星とか。」と口にしていた出木杉くんは、やがて大人になってから火星へ行く仕事につきました。

知的好奇心が旺盛な出木杉くんだからこそ、百聞は一見にしかずと考えて凄まじい努力を重ねたのでしょう。

ここで、のび太に目を転じてみましょう。

小学四年生(五年生)の時点で、彼は宇宙に何度も行っています。月にも火星にも。

そればかりか、複数の星の知的生命体と交流を持っています。のび太が行くケースもありますが、かなりの頻度で向こうから寄ってきます。

あろうことか、「ばーか!行けるわけないじゃん」と言っていたジャイアンですら、のび太を介して宇宙に行っています

のび太には、こうしたSFな出来事を引き寄せる力があるのです。最たるものはドラえもんとの出会いですが、それだけではありません。

『のび太の宇宙開拓史』に登場するロップルくんの宇宙船、そして『のび太とアニマルプラネット』で地球とアニマルプラネットをつなぐピンクのモヤ。これらは、ドラえもんの道具と関係なく、のび太の部屋とつながっていました。

何故つながるんでしょうか。「精神感応だ!」とドラえもんは言っています。(大長編ドラえもん『のび太の宇宙開拓史』)

ジャイ子と結婚した世界線ののび太でさえ、ロップルくんたち宇宙人と出会って、いざこざから生還していた可能性があります。ちょっとゾッとする話です。

その引き寄せ力(精神感応力?)に加え、ドラえもんの道具を使えるとなれば鬼に金棒。

地球上であれば、どの地域、どの時代にも行けて、じかに目で見ることができます。魔境、地底、海底、魔界まで行き、また向こうから未知の存在が寄ってきて冒険にいざないます。

  • コンゴの奥地にある最後の魔境「ヘビー・スモーカーズ・フォレスト」
  • 恐竜を絶滅に追い込んだ隕石が落下する光景 etc…

出木杉くんは、これらを知識として知ってはいます。それに対して、のび太は森の中がどうであったか、隕石落下の凄まじさをリアルに説明できるんですよ。

「出木杉くんにこのあいだ教わったアフリカの森だけどさ、本当にすごい魔境だったよ。人類で初めて僕らが踏み入ったんだ。知能を持った犬の文明があってね、それでね……」

体験主義の出木杉くんは、これをさらっと聴き流せるでしょうか。

こうした体験を、のび太はつぎつぎと得られるのです。出来杉くんはのび太の頼み事を引き受ける際、交換条件でのび太から与えられないと手に入りません。この差は大きいです。

知的好奇心が旺盛な出木杉くんが、そんなのび太をうらやむことなく過ごせるでしょうか

サナト

僕は、出木杉くんがのび太くんの引き寄せ力(精神感応力?)に憧れているし、それを普段はまっすぐに言えないのではないかなと考えています

タイムマシンに乗せてもらった時のように、誘われたら大喜びで行くけれど、自分から連れて行けとは言わないのが出木杉くんの奥ゆかしさです。もしかしたら、それは「自分で叶えるんだ」というプライドなのかも知れません。

※勝手な推測、妄想です。

のび太はしずかちゃんの好意を得たい。

出木杉くんはSFな世界をこの目で見たい。

お互いにとって「いつか叶えたいこと」の鍵を、相手が握っているような関係に見えます。それが子供の頃の二人の関係です。

サナト

そして大人になって、叶えたいことがお互いの手の中に収まったように思います

出木杉くんとのび太の関係まとめ

以上、出木杉くんがのび太に憧れる要素について書きました。

のび太くんは出木杉くんに恋の嫉妬をしている。出木杉くんはのび太の引き寄せ力に嫉妬しているかも知れない。

要点をまとめます。

POINT
  • 出木杉くんは勉強以外もすべて得意、のび太はすべて苦手
  • 「幸福な未来」を脅かす恋敵としてのび太は見ているが、一方でその人柄を信頼もしている
  • 出木杉くんは恋路に関しては敗れるが、嫉妬している様子はない
  • 出木杉くんは体験主義
  • 出木杉くんが嫉妬するとすれば、のび太のSF体験を引き寄せる力
  • 二人は自分が「いつか叶えたいこと」を相手に握られている。そして、大人になった時に、それが互いの手の中に収まっている

僕は原典を改変しない範囲で、より面白がれる解釈があればそれに越したことはない、というスタンスです。 この記事を通して、『ドラえもん』を楽しむ方が増えてくれれば幸いです。

引用は一定のルールにしたがって行ったつもりではありますが、公式からこれらの画像使用を否定されたらすぐに引っ込めます。

次回は、少し手垢の付いたテーマではありますが、出木杉くんが劇場版で活躍しない理由について書いてみたいと思います。

明日もあなたにとって良い日になりますように!

ブログ村

最後までお読み頂き誠にありがとうございます。
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