【ゲームで分かる】「不平等回避」は格差や不公平を嫌う心理

格差や不公平感を嫌う心理「不平等回避」


友達や同僚の給料が気になる。自分の方が低いと落ち込む
人の成功を見て不公平だ、妬ましいと思っちゃう
他人と比較してもしょうがない、と分かってるけど気になる

こんなふうに思ってしまうことはないでしょうか。

しかし、そんな自分に自己嫌悪を感じることはありませんよ! こうした発想に至るのはあなたの性格が悪いからではありませんので、まずはご安心下さい。むしろ、人間であればある程度仕方が無いことです。

今回は、そんな不平等を感じる人の心理について、一緒に考えていきたいと思います。

この記事を読むと分かること
  • 自分が不平等感に敏感な理由
  • 「不平等回避」とは何か
  • 自分を客観視するための2つの実験事例
  • この気持ちをどう扱うべきか
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格差や不平等が気になるのは何故か

格差

社会生活ではさまざまな格差が嫌でも目につく

現在は情報化社会です。インターネット、SNSを通じて、以前は知り得なかったような他人の情報がいともかんたんに手に入るようになってしまっています。そのなかで、他の人の給料事情や、仕事内容、住宅事情などもどんどん知り得てしまいますよね。

一昔前まで、知ることができるのはごく一部の、芸能人の納税データぐらいでした。しかし、いまはYou TubeでもSNSでも、インフルエンサーが高所得を開示してはばからない世の中。

・こんな良い家に住んでいるのか
・なんでこの人はこんなに稼いでるんだ

などなど、比較して落ち込んだり、劣等感を感じてしまうこともあるのではないでしょうか。

これは現代社会で生きている以上、ある面では仕方の無いことです。

他人を羨むのは性格だけの問題ではない

他人の生活を妬ましいと思ってしまうなんて、自分は性格が悪いのかな…

そんなふうに思ったことがあるかも知れませんが、それは多かれ少なかれほとんどの人が感じてしまう自然な感情です。

決してあなたの性格が悪いせいではありません

いえ、もちろん豪邸に盗みに入るとかしてたら、性格が良いとは言えませんが。

他人を引きずり下ろすような行動に出ていない範囲で「妬ましい」「悔しい」と感じるのであれば、それは普通の範疇です。

これは、人間が生得的に持っている本能のようなものです。それを裏付ける研究もなされています。

妬ましい心理の原因「不平等回避」

不平等回避(不平等嫌悪・不平等忌避)という概念

人は、自分と他人を比較します。そして、格差や不公平が生じた状態を嫌う傾向にあります。これは学術的には、「不平等回避」あるいは「不平等嫌悪」「不平等忌避」と呼ばれています。

不平等回避とは、「不平等な状態を好まない」という個人の選好である。他者の状態・行動が個人の効用にも影響する、という社会的選好(social preference)の一形態である。行動経済学(behavioral economics)と呼ばれる分野で発達した概念であり、90年以降に様々な定式化が試みられている。検証手法として、当初は実験経済学の手法が用いられ、後に神経科学の手法がとられるようになった。

脳科学辞典 「不平等嫌悪」https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E4%B8%8D%E5%B9%B3%E7%AD%89%E5%AB%8C%E6%82%AA

社会的選考とは、「個人は他者の利益や行動も考慮する(自分の利益だけを考慮するわけではない)」という概念です。

僕たちは本来、自分のことに集中していれば良いのかもしれません。が、ついつい他の人と自分を比べてしまいがち。特に、他人の方がとんでもない利益を得る状況があったりすると、すっごく気になっちゃうんですね。

  • ズルをして(不公平1)
  • お金をいっぱい手に入れる(不公平2)

これは、ダブルで不公平を感じさせるやつです。

世間が金銭的なスキャンダルにやたら厳しいのも、こうした心理が働いているためではないかと思われます。

また、単純にお金儲け自体が嫌いだ、という「嫌儲」のスタンスもあると思います。考え方は人それぞれなのですが、もしかしたら自分と相手を比較する上記の心理が働いているかも知れません。

最後通牒ゲームが示す「得をさせない」精神 

人間が不平等回避の傾向を持つことは、数々の実験で明らかにされています

極端な例でいえば、「自分の利益が減ってでも他人が得するのを妨害しようとする」といった行動も見られます。

そんなこと、普通するかなあ

とても不合理に聞こえますよね。

90年頃までは「個人は自分の利益だけが行動の動機」と考えられていたそうです。

しかし、さまざまな実験の結果、

どうも、利己的な動機ばかりじゃないな・・・

と明らかになってきました。

特に、少数の個人には当てはまらないケースが多く見られました。そこで社会的選考という概念が登場したのです。

実験では、お金を二人で分配するゲーム形式がよく用いられています。

そうした実験として有名なものの一つが、「最後通牒ゲーム」です。

なんか、モノモノしい名前だな

内容はけっこうシンプルですよ。どんなものか、一緒に見ていきましょう。

最後通牒ゲーム

プレイヤー①と②で、10,000円を分け合うゲームを行います。(この金額は実験によってまちまち)

プレイヤー①が最初にゲームマスターから10,000円を受け取ります。

これを二人でどう分けるか、というゲームです。

さて、プレイヤー①には2つのプランが与えられます

  • プランA 8:2で分ける
  • プランB 5:5で分ける

つまり、プランAだとプレイヤー①は8,000円、プレイヤー②は2,000円の取り分。

どちらを選ぶかはプレイヤー①が決めることができます。

そりゃあ、①の立場なら絶対にプランAを選ぶでしょう

しかし、一つ条件があります。

プレイヤー②には受諾するか、拒否するか選ぶ権利があるのです。

最後通牒ゲーム-プランA
最後通牒ゲーム-プランB

仮に「拒否」が発動すると、プレイヤー①、プレイヤー②ともに何も貰えません

ゲームマスターが10,000円を没収します。

何も得られないのは一番損だから、拒否はしないんじゃないかな。

自分が②の立場で、仮にプランAを提示されても泣く泣く受け入れると思うわ

いや、自分ならプレイヤー①のケチくささにムカついて、拒否を選ぶね

何組かで実験を行ったところ、実際に二人目の意見のように「自分が損してでも相手にも損をさせよう」と考えて「拒否」を発動する者が一定数出てきます。

これはプレイヤー②にとって、まったく得な行動ではありません。例え金額が少なくても、2,000円を得た方が良いはずなので、とても非合理的な行動です。

しかし、これを拒否する気持ち、分からなくもないんですよね。

サナト

いやすいません、カッコつけました。めちゃくちゃ分かります

人間はこのように、合理性だけでは生きられない生き物なのかも知れません。

自分だけが良い境遇になる選択を避ける心理

他人を引き上げる「不平等回避」

先ほどの実験で紹介したのは、相手を引きずり下ろそうとする不平等回避でした。しかし、これまで見てきた事例とは反対に、自分だけ得をしている状態を回避する傾向もあるのです。いわば、利他的な不平等回避です。

サナト

勝ちすぎると気が引けるんでしょうかね

ちなみに、他人と比較して「少ない」「多い」に対して抱く感情は下記である、という見解もあります。

自分が他人より得るものが 少ないと 羨望(envy)を抱きやすい

自分が他人より得るものが 多い と 後悔(regret)を抱きやすい

参考:応報論理からの離脱──公平性のゲーム理論の現在と課題 
https://www.rieti.go.jp/jp/columns/a01_0099.html

独裁者ゲームが示す、一人勝ちを避ける精神

さきほどの「最後通牒ゲーム」では、プレイヤー②が不公平さに不満を抱くと「拒否権」を発動する可能性がありました。そこで、プレイヤー①はこのように想像したりします。

「プレイヤー②が怒ったら、自分の利益も消失してしまう。自分の利益が減るけど、プランB(折半の案)を提示しようか」

これは自分の利益を確保するための打算です。この実験だけでは、他人を得させるような不平等回避を行うのかは定かではありません

そこで、「独裁者ゲーム」というものが考案されました。

もっとモノモノしい名前になった…!!

独裁者ゲーム

ルールはさらにシンプルになります。なんと、プレイヤー②に拒否権は無くなるのです。

独裁者であるプレイヤー①が示した提案を、ただただ呑むだけのゲームです。

いやこれ、ゲームって言えるのかよって感じですが。

独裁者ゲーム-プランA
独裁者ゲーム-プランB

私がプレイヤー①の立場だったら、絶対に8:2のプランAを提示するけどな

なんだか気が引けるから、プランBにしとくと思うわ

そうなのです。

ある実験結果によれば、なんと3/4のグループでプラン2(お金を折半)が選択されたというのです! なお、こうした実験では参加者同士の人間関係が結果に影響しないよう、毎回初対面の人同士を組ませるそうです。

参考:東京都立大学経済経営学部 「ゲーム理論1」講義(渡辺隆裕 氏)▼

サナト

人間の行動って、不可思議でおもしろいですね

目の前の人との差は、特に意識してしまう

ここまで見てきたとおり、人間は他人との差を”無くしたい”、”平らにしたい”と思う傾向がある、というのが不平等回避の考え方です。見上げる立場になったら羨望を抱き、下に見る立場になれば後悔を抱いて分け合ってしまう。

特に、少人数グループだったり、目の前に比較対象の人がいると、こうした傾向が強まるようです。目の前の人の取り分を、自分で削る選択はしづらい、ということですね。

ただ、見上げる立場の方が不平等回避の気持ちが強く出てしまいます。これも生き物としての生存戦略のひとつなのかも知れません。

筆者が実践した不公平感・不平等感を減らす方法

自他の比較

「他人と比較しない」いきなりは難しい

メンタルケアの書籍でも、SNSでもこのように言われます

  • 他人と比較するのをやめよう
  • 自分は自分。人は関係ない

確かにそのとおりなんです。まったくそのとおり!

最終的にはそれを目指すのが正しいと、僕も思っています。

しかし、いきなり今から考えを変えろと言われても難しいのも事実です。だって、瞬発的に湧き上がる思考ですから。それを変えるには、時間をかけた意識付けが必要です。

たとえば、自己啓発の名著を読み込んで、しっかりと著者の思考を自分の中に落としこむ。それにより、少しずつ内面や捉え方を変えていくイメージですね。

だけども、問題は今日の雨。いや今の感情です。

不平等を感じたら比較の軸を増やす

相手と自分を比較した時、「あいつの方がお金を持っている」と羨む。それは1軸だけで比較している状態です。これに、比較する軸を増やして考え直してみてはどうでしょう

これは手っ取り早くてオススメです。

比較する軸の例
  • 仕事
  • スキル
  • 家族
  • 仲間
  • 年齢
  • 自由な時間
  • 健康
  • 生い立ち などなど

相手が欲しているであろうものを、自分が幾つか持っていることを発見できるのではないでしょうか。

それでもモヤモヤが晴れなかったら、それは自分が心の底で現状を変えたいと願っているサインかも知れません。

時間をかけることになるかも知れませんが、居場所を移すなり自分を伸ばすことで精神衛生を保つ方が建設的です。

変えられるものを変える

不平等感というより劣等感の話になりますが、相手と差を感じた時には、自分が変わる選択をすることをオススメします。劣等感を感じてそれを自分を変える力にするのはとても良いことです。

反面、相手に対する羨望、嫉妬は自分にとってプラスに働くことがとても少ないのです。

こちらの記事で詳しく述べているのでご覧ください。

まとめ

以上、「不平等回避」について解説してきました。

要点をまとめます

POINT
  • 格差や不公平感を嫌う心理が「不平等回避」
  • 他人を妬む、羨むのは人間である以上は仕方がない
  • 最後通牒ゲームでは、自分が損してでも他人を同じ場所に落とす心理が見えた
  • 独裁者ゲームでは、自分が損してでも他人を同じ場所に上げる心理が見えた
  • 人間には、目の前の人との差を減らしたいと願う心理が働く
  • すぐに他人と比較しない思考に変わるのは難しい
  • まずは比較の軸を増やしてみる。それでも気になら自己変革のチャンスと捉える

人ってこういうふうに思いがちなんだ〜と、俯瞰することになっていれば幸いです。

自分の状況を俯瞰したり、研究結果と照らすことで気持ちが整理できることもあると思います。

明日もあなたにとって良い日になりますように!

ブログ村

最後までお読み頂き誠にありがとうございます。
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